関門海峡で、始めて釣りをされる方は、それまでに潮の流れが速い釣り場での、釣りの経験が少ないと、早い流れに戸惑ってしまう方も多いと思います。
また、通常の満潮や干潮といった、潮の満ち引き以外にも、西流れや東流れといった聞きなれない言葉が出てきたりします。
関門エリアの釣りになれているベテランの口からは、「このポイントでは、西流れの時がいい」とか「東流れに変わった瞬間に時合になる」というような言葉も聞かれますが、初めて聞くと何を言っているのか、よく分からないと思います。
中々、釣りに役立つような、関門海峡の潮流を説明を見つけることが難しいので、今回は、関門海峡の基礎知識から西流れや東流れといった、潮流の仕組みについて、これまでの関門海峡での釣りの経験(最近はほとんど行っていないですが)を元に、解説していきたいと思います。
関門海峡の基礎知識
関門海峡の基礎知識はとても潮の流れが速い所ですが、日本国内では、3番目に早い場所になります。
大潮の時で、9.4ノットと10ノット近い潮流の早さになります。
小潮の時でも、5ノット近い潮流の早さになると言われています。
鳴門海峡が10.5ノットで日本国内で一番潮流が速く、続いて来島海峡が10.3ノットで2番目となります。
いずれの場所も、瀬戸内海に有るので、瀬戸内海は潮汐の干満の差が大きいことや、狭い水道や瀬戸などが多く、地形が複雑なことと、関連が有ります。
関門海峡も、瀬戸内海の左側の端になるので、瀬戸内海の潮汐の干満の差が大きいことに影響を受けています。
(火の山下潮流信号)
関門海峡の一番幅の狭い場所は、関門橋東側の、火の山下潮流信号付近の海岸(下関側)から、門司埼(北九州市側)までの約650mで、この狭い海峡も潮流の早さの要因の一つとなっています。
(門司埼灯台)
関門海峡では、一番深い場所の水深は、関門橋の東側約1.1kmの場所で約47m有るそうです。
関門海峡の中央付近には、船舶が航行する関門航路が有りますが、ほぼ水深12m(通常のビルの4階くらいの高さ)で、思ったよりは深く有りません。
このことも、早い潮流と関連があると思います。
以前、関門海峡で、中国船が沈没したことが有りましたが、その時には、沈没した船舶のマストなどが海面から出ている姿が、陸からも確認出来たので、それほど水深が有る場所では有りません。
関門海峡の潮流について
海流と潮流の違いについて
よく似た言葉ですが、海流と潮流の違いが分かりますか?
いずれも海の中の、潮の流れだという程度しか分からないと思います。
海流
海流とは、常に一定の方向に流れている大きな潮の流れのことを言います。
代表的なものが太平洋側を、フィリピン周辺から沖縄の近辺を通過して、日本の太平洋側を北上している黒潮が有ります。
また、日本海側を北上している対馬暖流も有ります。
いずれも、方向は一定で、南側(日本の下側)から北側(日本の上側)に向かって流れていて、季節や時間帯によって流れの方向が変わることは有りません。
潮の早さは、黒潮で2~3ノットくらいで対馬暖流で1~1.5ノットくらいです。
黒潮や対馬暖流と比較してみても、関門海峡の潮流の早さが分かると思います。
しかし、多少、流れの早さが変わっても、一定の方向に流れるので有れば、釣りの攻略はそれほど、難しくはないはずです。
では、潮流は海流とはどう違うのでしょうか?
潮流
潮流とは、潮汐の干満により、周期的に流れの方向が、ほぼ180度変化する潮の流れのことを言います。
これが、関門海峡でいう、西流れや東流れといった潮流になります。
潮流は、1日に4回、約6時間毎に、潮汐の干満に応じて潮の流れが東と西と交互に変わっています。
この変化を理解していないと、中々、関門海峡の攻略は難しくなります。
潮流が発生するメカニズム
関門海峡では、東の瀬戸内海側と西の響灘側とで、潮の干満差が大きく違います。
東の瀬戸内海側は、潮の干満差が大きく、約3.8mの干満差が有ります。
西の響灘側では、潮の干満差は、約1.5mです。
(干満差とは、満潮時と潮位と干潮時の潮位の差を言います)
(例)
瀬戸内側では、干潮時0.2m 満潮時 4m で干満差3.8mです。
響灘側では、 干潮時1.0m 満潮時 2.5m で干満差1.5mです。
例を見比べてみると、
干潮時の潮位は、瀬戸内側は0.2mに対して、響灘側は、1.0mとなっています。
干潮時には、瀬戸内側の潮位が低くなっています。
水は、高い方から低い方へ流れて行くので、響灘側(西側)から瀬戸内海側(東側)に流れて行くので、東流れになります。
逆に、満潮時で見てみると、満潮時の潮位は、瀬戸内海側は4mに対して、響灘側は2.5mです。
満潮時には、瀬戸内側の潮位が高くなっています。
満潮時も、水は、高い方から低い方へ流れて行くので、瀬戸内海側(東側)から響灘側(西側)に流れて行くので、西流れになります。
ここで、疑問を持たれた方もいらっしやると思いますが、潮流の向きの呼び方は、風向きとは反対で、流れて来る方向ではなく、流れて行く方向で呼びます。
だから、干潮時に、東に向かって流れる潮流を、東流れと呼び、
満潮時に、西に向かって流れる潮流を、西流れと呼びます。
動画による潮流の説明
北九州市門司区の和布刈遊歩道から見た、西流れの潮流の様子です。
画面、右側(東側)が瀬戸内海側です。
画面、左側(西側)が響灘側です。
潮流の向きは、風向きと逆の表現をするので、慣れるまでは勘違いしやすいので、注意してくださいね。
この画像の場合、右(東側)から左(西側)に流れているので、西流れの潮流になります。
風向きだと、東から吹いてくる風を東風と言いますが、潮流の場合は、流れていく方向で表すので、西流れと言います。
この時点では、満潮に近い時間帯で、右側(東側)の瀬戸内海側の 潮位が高くなっているので、潮位の高い瀬戸内側から潮位が低い、左側(西側)の響灘側に海水が流れていって、潮流が発生しています。
干潮時では、左側(西側)から右側(東側)に流れが変わっています。
潮流を知る方法
火の山下潮流信号が、門司側から見ることが出来ます。
関門大橋下・和布刈遊歩道・田野浦ふ頭・太刀浦ふ頭など
写真では、ちょつと見難いですが、
E(イースト)
東流れ
5
流速5ノット
⇩
流れている方向
以上の情報を、電光板で航行する船舶に知らせています。
西流れの時はW(ウエスト)の表示になります。
潮流信号が見れない釣り場では、
関門海峡海上交通センターのホームページ
https://www6.kaiho.mlit.go.jp/kanmon/currenttide/currenttide.htm#
に、潮流・潮汐情報が掲載されていて、15分毎に更新されています。
本来は、船舶の安全航行の為のものですが、現在の潮流の方向や流速が15分毎に更新されて表示されるので、釣りにも大変、役に立つサイトです。
下関市市内や北九州市内の釣具店に、関門海峡の潮流が記載された潮見表が置いてあるところも有ります。
釣りに活用していくには
今までの話を整理すると・・・
北九州側では
満潮時は、西流れで、右側(東側)から左側に(西側)に潮流は流れて行きます。
干潮時は、東流れで、左側(西側)から右側に(東側)に潮流は流れていきます。
下関側は対岸になるので、
満潮時には、西流れで、左側(東側)から右側(西側)に潮流は流れていきます。
干潮時には、東流れで、右側(西側)から左側(東側)に潮流は流れていきます。
以上の流れを頭の中で整理できていれば、釣り座を選ぶ際に、釣りにくい当て潮にならない場所を、見つけ出すことが、出来ると思います。
釣り場によっては、西流れがいい場合や、東流れがいい場合も有るので、最低限、ここ記載している程度の知識を付けてもらえば、釣りの情報等を聞いたりした時にも、理解できると思います。
おまけ
関門人道トンネル
他では余り見られない、海底を歩いて渡れるトンネルが有ります。
自転車や原付バイクも通行することが出来ます。
雨の日も濡れず、冬も強風に吹かれることが無いので、地元の方のランニングコースにもなっています。
下関市や北九州市在住の方は、1度は通ったことが有るかも知れませんが、遠くから来られた方は、1度通って見られるのもいいかも知れませんね。
関門海峡の海水が出る水道
地元の方でも、ほとんど知らない関門海峡の海水が出る水道が、下関市側の関門人道トンネル入り口付近に有ります。
通常の蛇口が2つとと、業者用の茶色いホースが付いた大口径の蛇口が有ります。
活魚運搬用のトラックが海水を、トラックの生け簀に入れに来ていることがよく有り、下関市や北九州市の生け簀付きの料理店は、ここの海水を使っている店が多いと聞いたことが有ります。
我が家では、水槽にクマノミとイソギンチャクを飼っているので、水槽の水換えにここの海水を使用しています。
海水の比重が1.017~1.018位と少し、比重が低いですが人工海水を足して比重を合せています。
結構、高価な人工海水ですが、財布を気にせずにどんどん、水換えが出来るので、水槽のイソギンチャクやクマノミも元気です!
源平合戦・壇ノ浦の戦い
平家と源氏が戦った壇ノ浦の戦いで、この西流れと東流れの潮流が、戦いに影響を与えたと言います(所説有り)
彦島から出陣した平家は、門司の田ノ浦辺りから、下関市の長府沖に陣を構えた、源氏に向かって、東流れの潮流に乗って攻め込み、当初は優勢だったのが、午後から、西流れの潮流に変わり、劣勢になったという説が有ります。
この潮流の早さを見ていると、そのような説にも納得してしまいます。